[ 第1回 ] 映画作りのことなら、相手が誰でも妥協や遠慮はしない
---かつての日本人には、思い出の土台となる美しい自然があった。それを未来に向かって取り戻したい。
インタビューの前に、木村大作撮影監督は20分のDVDを見せてくれた。映画本編には使用されなかったフィルムと、自分ひとりで撮影したフィルムを集めて編集したもので、クラシック音楽をBGMに、日本各地の美しい自然と蒸気機関車が走る映像だ。素晴らしい風景は実際の自然以上に季節と心を感じさせる。冒頭の言葉は、このDVDに収録された言葉だ。
映画は光と影の芸術、と言う木村の部屋にはスタンドライトやデスクライトなど様々な照明器具がある。「日本の家は上にひとつライトがあるだけだろ。それじゃ光の濃淡なんかないよな。いろんなスタンドを日常的に使うと光のイメージがつかめるんだ」と言う。「実生活のすべてが勉強なんだ」とは、木村大作の哲学だ。
毎日映画コンクールでは第36回「駅」、第52回「誘拐」で撮影賞を受賞。長年、日本映画の最前線で活躍してきた。映画作りでは相手がプロデューサーや監督であっても妥協や遠慮をしないことで知られている。
凍てつくような野外、長時間の厳しい撮影が続く現場に音を上げる俳優さんたちに、木村はロダンの彫刻「考える人」を引き合いに出してこう語った。
「あれは右肘を左膝につけてるんだ。右膝につけた方が楽だよな。わざわざ体をひねって、筋肉を伸ばしている。ロダンは厳しい姿勢を強いることで、体の線の美しさを求めている。人間は、厳しい状況にあった方が美しく見えるんだ」
生年月日:1939年7月13日 出身地:東京都
初撮影監督作:「野獣狩り」(1973年、須川栄三監督)東宝撮影所撮影部にキャメラ助手として入社し、主に斎藤孝雄氏、村井博氏に師事する。1973年、「野獣狩り」で初めて撮影監督を務める。1977年、「八甲田山」で第1回日本アカデミー賞優秀技術賞、第21回三浦賞を受賞したのち、様々な映画の撮影賞を受賞。毎日映画コンクール撮影賞は、第36回(1981年)「駅」、第52回(1997年)「誘拐」の2度受賞している。近年の作品は「赤い月」(2004年、降旗康男監督)など。2003年秋、紫綬褒章受賞。