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映画人列伝

根岸吉太郎(映画監督)

[ 第2回 ] 都市化の中で疎外される若者たちを描く

『雪に願うこと』は北海道を舞台に兄弟の葛藤を描いている。東京の大学を出て就職し、バブル経済に踊った弟(伊勢谷友介)、寒風吹きすさぶ帯広でばんえい競馬の厩舎を支える兄(佐藤浩市)のドラマである。脚本賞(加藤正人)、男優主演賞(佐藤浩市)、録音賞(小野寺修)も受賞した。日本映画大賞こそ逸したが、主要部門を制して実質的な最高評価を得たと言っていい。
 「本当の寒さを知っている脚本家として秋田出身の加藤に頼んだ。競馬シーンは取り直しができない。カメラ6台で撮影した。撮影監督の町田博は苦労した。日本中どこに行っても同じような景色になってしまったが、どこかある場所を描くことで見えてくるものがある。そこから全体が見えるドラマ、そんなことを考えています」
 確かに日活ロマンポルノの『情事の方程式』『暴行儀式』『狂った果実』などにしても、ATG作品『遠雷』、東宝配給の『ウホッホ探検隊』、さらには近作『透光の樹』など、家族の絆や親子兄弟の葛藤、あるいは都市化現象の中で疎外される都市近郊や農漁村の若者たちを一貫して描いてきた。ちなみに『雪に願うこと』は第14回東京国際映画祭でグランプリに輝いている。次回作もすでに撮り終えている。56歳。父祖の拓いた地、浅草に最近は住んでいる。シャイな性格ではあるが、日本映画界を背負うエース監督である。

1950年、東京都生まれ。74年早稲田大学第一文学部演劇学科卒業、日活に助監督として入社。藤田敏八、曽根中生に師事。78年日活作品『オリオンの殺意より、情事の方程式』で監督デビュー、『遠雷』(81)でブルーリボン賞監督賞、芸術祭選奨新人賞を受賞した。その後も『探偵物語』『ウホッホ探検隊』『永遠の1/2』などの作品で着実に評価を高めていく。1990年代中ごろは映画製作から離れていたが1998年に『絆』で復活。鋭い時代の切り取り方、確かな作劇術、細かい演出力、描写力は特に高い評価を得ている。2006年『雪に願うこと』で東京国際映画祭の4部門、第61回毎日映画コンクール監督賞を受賞した。