「人に渡したくない役」初めて
「自分が賞をいただけるとは思えなかったし、その器じゃないと。でも、この作品は特別。これで賞をいただいたのは大きな意味のあること」
「夕凪の街 桜の国」で受賞。「今までとは違う何かを感じました。こういう映画、こういう役を演じたかったと。他の人に渡したくない、と初めて思いました」
広島で被爆した13年後、原爆症のため命を落とす皆実。生き延びたことに後ろめたさを感じ、死に際に「またひとり殺せたって、ちゃんと思うてくれとる?」と原爆を投下した相手に問いかける。重く難しい役柄だった。
「戦争ものは苦手で、映画やニュースも見ないようにしてきたくらい」というが、今回は正面から向き合った。広島や長崎を訪ね、写真集やビデオを見るなど、思いつく限りの準備をした。知れば知るほど分からなくなったが、「大切なのは、亡くなった方々の気持ちを理解しようとする姿勢ではないか。そう気づいて、現場に入ってふっ切れました」。
撮影中は、全身全霊で皆実を生きた。泣く場面ではないのに、待ち受ける不幸を思ってボロボロ涙がこぼれて撮影を中断したり、感情を抑えるのに苦労した。「私の中では、皆実の最後の気持ちは周りの人々への感謝でした。怒りや悲しみ、憎しみもあったけれど、それで死んでいきたくなかった」
アイドル歌手志望だったが、今村昌平監督の「カンゾー先生」でヒロインに抜てき。以来、確かな演技力と清潔な存在感で引っ張りだこだ。活躍は海外にも広がり、イランと日本の合作映画「ハーフェズ ペルシャの詩」にも出演。昨年末には結婚と、いいことずくめの07年。「誰も立っていない場所」を目指し、今年も頑張る。
(文:毎日新聞社 勝田友巳、撮影:同 木葉健二)
1978年千葉県生まれ。94年に「三菱電機・ハイビジョン」のCMでデビュー。『カンゾー先生』(98/今村昌平)でヒロインに抜擢され、一躍注目を浴びる。同作で、第23回報知映画賞、第22回日本アカデミー賞最優秀助演女優賞ほか多数の賞を獲得。『贅沢な骨』(02/行定勲)で第16回高崎映画祭、第11回日本映画プロフェッショナル大賞最優秀主演女優賞を授賞する。主な出演作品に『ひまわり』(00/行定勲)、『回路』(01/黒沢清)、『ラストシーン』(02/中田秀夫)『魔界転生』(03/平山秀幸)、『CASSHERN』(04/紀里谷和明)、『THE有頂天ホテル』(06/三谷幸喜)など。近年はTVドラマ『時効警察』(06/テレビ朝日)シリーズに出演し、新たなる新境地を開拓した。最新作にイランの巨匠アボルファズル・ジャリリ監督の『ハーフェズペルシャの詩』で海外初進出。08年の公開待機作に『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』(塚本連平)、『Beauty−美しきもの−』(後藤俊夫)、『たみおのしあわせ』(岩松了)、『純喫茶磯辺』(吉田惠輔)、『コドモのコドモ』(萩生田宏治)などがある。