HOME > 受賞者インタビュー > 第61回コンクール > 西川美和 > [ 第2回 ] 映像の行間を読んでもらえるようなものを

受賞者インタビュー

第61回コンクール

西川美和

[ 第2回 ] 映像の行間を読んでもらえるようなものを

『ゆれる』は、田舎で家業のガソリンスタンドを経営しながら父親の面倒をみている兄(香川照之)と、東京に出てカメラマンとして成功した弟(オダギリジョー)の物語。弟の元恋人のつり橋での転落死をきっかけに変貌していく兄弟関係を描き、人間の絆や記憶などの不確かさを探っていく。余計な説明をそぎ落とし、登場人物の感情や結末は、見る側によって異なる。
 「テレビと映画の違いは、注ぎ込む集中力の差ではないか。日常的に楽しめるのがテレビの良いところ。それに対して映画は、入場料を払い、時間に合わせて見に来てもらうもので、座っていればいいテレビと違って、どれだけ参加してもらえるかだと思う。いろんな感覚を体験してもらい、映像の行間を読んでもらえるようなものでなければと思う」
 主演した香川とオダギリを「1つの作品を一緒に作った同志」と紹介する。「私には俳優と監督のかかわりに関しての経験がそれほどなかったし、俳優とこんな関係が作れるとは正直思っていなかった。この2人は俳優というより作り手に近いメンタリティーを持っている。これだけ力のある俳優たちががっちり組んだ映画を、私自身、観客としても見てみたいと思っていた」
 そんな充実した関係が生まれた現場は「集中した濃い体験」になった。だから「またやろうとは気軽に言えない。これよりもっと魅力的と思える役をお願いしないといけないから。もう3人で仕事をすることはないかもしれないと思うと、寂しい気もする」
 なお『ゆれる』はすでに韓国でも公開されたが、その他の国での上映は決まっていない。「いろいろな国の映画を見て育ったので、遠い国の普通の人々に見 てもらいたい」 (T)

1974年、広島県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。学生時代より映画製作を志し、大学在学中に是枝裕和監督に見出されて、映画『ワンダフルライフ』にフリーのスタッフとして参加する。以後、様々な日本映画の現場で活動したのち、日本の典型的な家庭の崩壊劇をシニカルに描いたブラック・コメディ『蛇イチゴ』(02年)でオリジナル脚本・監督デビューを果たし、第58回毎日映画コンクール・脚本賞のほか、その年の数々の国内映画賞の新人賞を獲得した。
03年、NHKハイビジョンスペシャルでは、ドキュメンタリーと架空のドラマを交差させた異色のテレビ作品「いま裸にしたい男達/宮迫が笑われなくなった日」を発表し、第20回ATP賞・ドキュメンタリー部門優秀賞を受賞した。05年には、監督5名の競作によるオムニバス『female』にて、乃波アサ原作の短編小説を脚色・演出した「女神のかかと(主演・大塚寧々)」を発表。06年秋にはオムニバス映画『ユメ十夜』(原作・夏目漱石)が公開予定。『ゆれる』は4年ぶりの完全オリジナル長篇映画となる。