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受賞者インタビュー

第62回コンクール

ドキュメンタリー映画賞・野本大

初の監督作「間違っていなかった」

初めての監督作「バックドロップ クルディスタン」で見事受賞。この作品を撮るために、日本映画学校を卒業直前で中退した。在日クルド人難民の一家にカメラを向け、日本からトルコ、ニュージーランドと追いかけて、彼らの生活や心情を映しとった。「未熟だが、行動力が素晴らしい」と評価された。
 思いは終始、「この家族を知りたい」。難民問題に関心があったわけではなく、取材対象をこの一家に決めたのも、在日外国人のイベントで目立っていたから。だが、次第に一家の苦境を理解する。
 弾圧でトルコを追われ、10年以上家族バラバラの時を過ごした後、ようやく日本でそろって暮らし始めたばかり。それなのに難民認定を受けられず、強制送還におびえている。
 「どうして家族が一緒に暮らせないのか」という憤り、「自分は何もできない」という不満。そんな感情を抱きつつ、「政治問題としてではなく、一人一人の人間の日常と人生を見つめたい」とカメラを回し続けた。
 ついに父親と息子は強制送還され、家族も出国。思いもよらぬ急展開に戸惑いつつも、その時点で撮影を終えるつもりだった。ところが、プロデューサーとしてかかわるようになる友人から「まだ終われないのでは」と指摘されて思い直す。一家をトルコの出身村まで追いかけた。
 すると意外にも、一家に否定的な声もあり、「クルド語はいらない」という子供がいた。村人たちに「何しに来た」と問われて、答えられない。「地に足の着いていない自分の弱さを知った」
 受賞で「自分は間違っていなかったと、ホッとした」。83年生まれ。難民一家を追った旅は、自分発見の道のりでもあった。
(文:毎日新聞社 勝田友巳、撮影:同 兵藤公治)

野本 大(のもと まさる)
1983年6月生まれ。埼玉県羽生市出身。高校卒業後、日本映画学校に入学し、ドキュメンタリーの制作を学ぶ。2年次に、自傷癖のある女子高生を撮った「*@17」の演出を務め、卒業制作にはクルド難民企画を提出するもあえなく落選。撮影を続行するため同校を中退し、3年がかりで今作品を完成させた。
「バックドロップ クルディスタン」は2008年7月以降全国順次公開予定。
http://www.back-drop-kurdistan.com/