地味な作品でも評価され励みに
「映画の賞なんて新人賞以来。びっくりしましたが、とてもうれしいです」
受賞対象は「ふみ子の海」の笹山タカ役。戦前の新潟で、自らと同じ盲目の少女たちを自立させるために厳しく指導するマッサージ師だ。「3年前の私なら、お断りしていた難しい役」と振り返る。
「舞台『天保十二年のシェイクスピア』で悪女を演じ、自分の中の“壁”を破って演技の幅が広がった時期にお話をいただいたんです。ですから『面白いわ』と挑戦しました」
盲学校の卒業式に立ち会ったり、目の不自由なマッサージ師にもみ方の指導を受けた。「とても明るい方で、『かわいそう』という勝手な考え方はやめようと。なりきることは無理でも、目が見えないまま生きる厳しさを、自分なりに理解したつもりです」
そして、怖い師匠に徹した。怒鳴り方の迫力も半端ではない。「愛情をにじませよう、なんて全然考えずに」と笑う。目を見開き、感情を前面に出した。「映画を見ている人に思いが伝わることに重きを置きました」
撮影に臨む際、もう一つ特別な思いがあった。本作の本間信行プロデューサーと近藤明男監督は、デビューした大映での仕事仲間。近年は舞台での活躍が目立っていたが、「自分の原点に返る気持ちで」取り組んだ。
10代で映画の主役を何度もつとめた後、高橋伴明監督と結婚。子育てに専念した時期を経て、40代で本格的に復帰した。「落ちつくとなまけちゃうので、全身の細胞を活性化させ、目の前の仕事に精いっぱいぶつかってきたつもりです」
「今回のように地味な作品でも、きちんと評価して下さる方がいたことは励みになります。この映画を、もっと多くの人に見ていただければ」
(文:毎日新聞社 岸桂子、撮影:同 塩入正夫)