園子温監督作品「紀子の食卓」。少ない劇場で公開されたこの作品、その小規模な上映ではおいつけない程の強大なものを含んでいるのではないだろうか。
社会の中で我々人は自分に与えられた、たくさんの役割をこなして毎日を生きている。そのうち「家族」における役割、というものに焦点を当てたのがこの作品だ。
17歳、主人公紀子。退屈でたまらない田舎にて家族四人で暮らしている。毎日食卓を囲むこの家族は、一見理想的といえるかもしれなかった。だが停電を機に紀子 は東京へ家出、妹ユカもしばらく後姉を追って家出。母妙子は責任を感じ自殺。田舎には父徹三一人が残され、家族は崩壊してしまう。いったい何がいけなかったのか、本当の家族とはいったいどんな形なのか。父徹三は苦脳する。
時間にして2時間39分。泣けた笑えた楽しかったね、そのような優しい作品ではない。見たあとにどっと重いものがのしかかってくる。見終わったあとしばらく言葉も出てこない。恐ろしい衝撃的な作品とさえも言える。時間のせいだけではない、監督が訴えたいメッセージが見る側の体の芯にまで染み込んでくるからだ。だがしかし、これこそが真の映画である。
投稿者:慶應義塾大学1年 安浪敦子
[ 映画情報 ] 「紀子の食卓」
監督 ● 園子温
主演 ● 吹石一恵
製作 ● マザーアーク
公開 ● 2006年鑑賞情報 ● 渋谷東急、K's cinema