硫黄島の洞窟、その土中から布の包が掘り出された。結びをほどくと、かつて失われた無数の声が甦ってくる―
太平洋戦争末期の硫黄島を舞台にした激戦。イーストウッド監督の「硫黄島二部作」は、この戦いを日米双方の視点から描く。米側から見た前作に続き、第二部は日本側からのドラマである。
日本守備隊を指揮する栗林中将は、アメリカ留学の経験を持つ人物。不条理な体罰や自決に走りがちな日本軍に、洗練された合理精神を持ち込み、持久戦を展開する。圧倒的な物量で迫り来る米軍を前に、一日でも長く本土を防衛せんとする死闘を繰り広げる。
この戦争映画に底流する主題、それは「土」の両義性だ。米軍の迎撃に備え、守備隊は塹壕を掘る。やがて銃弾が地をえぐり、艦砲射撃が砂浜を吹き飛ばす。頭 上に舞い上がり、重量感を持って降り注ぐ土砂の滝。土は盾となって兵を守る反面、塊となって襲いかかる。冷たく硬質な映像ににじむ、血の赤が鮮烈に映え る。土と身体の混じる戦場。
栗林中将は部下に、遺体が敵に発見されぬよう隠せと指示する。部下は穴を掘って遺体を埋める。中将はまた、 兵たちが家族に書いた手紙を全て焼却せよとも命じる。しかし部下はこれらも土に埋める。土は物を覆い隠すが、そこに意志が込められたとき、そしていつか堀 り出そうとする者が現れたとき、「未来へ保存し送り届ける」役割を果たす。
土にまみれ、土に守られ、送り届けられた手紙と思いが、いま紐解かれる。
投稿者:立命館大学文学研究科・三回生 友田義行
[ 映画情報 ] 硫黄島からの手紙
監督 ● クリント・イーストウッド
主演 ● 渡辺謙
公開 ● 2007年鑑賞情報 ● TOHOシネマズ二条