「生きてくれ!」。ヒロシマ、ナガサキの地に立つ度、力強いメッセージが背中を押してくれる。そう思わずにはいられなくなった、この作品に出会ってから、ずっと…。
つらかったことは忘れてしまえば済まされるのか。いや、決してそうではない。語り継いでこそ、明日へつながっていく。終戦から3年後の夏、広島の街、ある 父と娘が仲良く暮らしている。だが事実、1945年8月6日、娘(宮沢りえ)は全ての身寄りを失っていた。なんと父(原田芳雄)は、娘の悩める思いが生み 出した幽霊だったのだ。
「うちはしあわせになってはいけんのじゃ」。あの日、父を火の海に置き去りにした記憶。「生きとんのが申し訳 のうてならん。じゃけんど死ぬ勇気もないです」。そんな愛娘に父はいつも寄り添いながら、「おまいはわしによって生かされとる」「こよな別れが末代まで二 度とあっちゃいけん」「覚えてもろうんがおまいの仕事じゃろうが」
原作者・井上ひさし氏は、被爆者の方々の手記を「聖書」と呼ぶそう だ。そんな「神の声」によって紡がれたこの物語は、幸せの結末へ。ついに笑顔を取り戻した娘。彼女を前に、父はゆっくりと消えていく。彼が再び、この世に 登場しなければならないか否か、それは、生きている私たち次第だ。
もはや世界は、核存在の恐怖から逃れられない。今、過去と未来のために何ができるのか。きっと、まず静かに祈ること、それが第一歩だと私は思う。
投稿者:関西大学法学部 4回生 橋本 智子
[ 映画情報 ] 父と暮せば
監督 ● 黒木 和雄
主演 ● 宮沢 りえ
製作 ● 2004「父と暮せば」パートナーズ
公開 ● 2004年鑑賞情報 ● DVD