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学生映画見聞録

2007年4月のMVP

市川崑×岩井俊二 市川崑物語

 90歳を過ぎてなお現役の映画監督、市川崑。横溝正史のおどろおどろしい世界を独自の感性で演出し、日本の風土のなかで美しい映像に捉えた人物。昨年30年ぶりに再製作された『犬神家の一族』は記憶に新しい。
 
  この市川監督を憧憬し、敬愛し、「この世の中で一番話の合う人」とまで呼んだ新しい世代の映画人、それが岩井俊二だ。『花とアリス』以来の最新作に、岩井監督は「市川崑」と「愛」のテーマを選んだ。

  市川崑の半生を描くこの作品で機軸に据えられているのは、監督の妻・和田夏十である。夫の生活を支える主婦として、そして監督と協働するシナリオ作家とし て生きた彼女。岩井俊二は、彼女の人生を語ることがそのまま市川崑を語ることと重なるような、稠密な愛の物語に紡ぎあげている。

  市川監 督への尊敬と愛を惜しみなく語り続ける岩井俊二は、「天才監督」ではなく、「映画を熱愛する青年」に戻っている。特に、市川監督による貴重な初期アニメー ション映像や、『犬神家の一族』の場面を具体的に提示しながら、その映像について熱く語るシーンは圧巻だ。自分がどこに感動し、感嘆し、驚愕し、触発され たか。映画評論家とは違う、実作者ならではの視点と言葉からは、「こんな映像を作る人に近づきたい!」という熱気が伝わってくる。

  「市川崑物語」は「岩井俊二物語」であり、映画に魅了されたすべての人たちの物語でもある。映画は、誰かに憧れることの素晴らしさを伝えてくれる。


投稿者:立命館大学院文学研究科・四回生 友田義行

[ 映画情報 ] 市川崑物語
監督 ● 岩井俊二
主演 ● 市川崑
製作 ● ロックウェルアイズ
公開 ● 2007年鑑賞情報 ● 京都シネマ