現場こそ最高の教室!(連載第6回)
Q 産業・地域との連携による人材育成を進めていると、お聞きしましたが。
かつては、撮影所システムが映像人材育成の中心でした。製作現場で培ったノウハウは、撮影所で確実に次の世代に受け継がれていたのです。ところが,残念ながら、そのシステムは崩壊しています。そこで、われわれは、本庄にある早稲田大学の映像研究施設「芸術・科学センター」のデジタル技術を最大限に生かして、むしろ撮影現場を大学内や本庄の近隣に招き入れ、学生、市民を巻き込んだ映像教育に取り組んでいます。
ことの発端は、早稲田の先輩で特命教授である篠田正浩監督の「スパイ・ゾルゲ」でした。本庄市を中心にフルデジタルで撮影され、「芸術・科学センター」で銀座、数寄屋橋、上海などの当時の風景が合成され再現されました。
その後、樋口真嗣監督の「ローレライ」では、潜水艦や爆撃戦闘機などが撮影、合成されたり、「日本沈没」では、大学内が首相官邸の撮影現場となり、本庄の町では逃げ惑う市民や燃え上がり爆発する車が撮影され、かってゾルゲで撮影された丘では、沈没する町を逃れて避難する群衆などが撮影され編集・合成されました。これらには、本庄市民や学生たちが参加し、合成の現場でもインターン研修を行っています。
本庄市民のかたがたとは、学生との映像製作にも参加・協力していただき、今年3月には学生の製作した「Life」という作品がユーロスペースで上映されています。また、林海象監督の好意で「探偵事務所5」では、学生が制作、監督、カメラを担当させていただき、為になる教育となりました。
やはり、現場こそ最高の教室です。
(以下次号)
あんどう こうへい 1944年 東京都生まれ
パリ留学後、寺山修司の天井桟敷に在籍。TBSを経て、現在、早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授。
69年「オーマイマザー」(オーバーハウゼン国際映画祭入賞)、71年「息子達」(トノンレバン国際映画祭グランプリ)、94年「アインシュタインは黄昏の向こうからやってくる」(HD。ハワイ国際映画祭銀賞)、98年「フェルメールの囁き」(HD。モントルー国際映像祭グランプリ)などの作品がある。