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脚本家・橋本忍と映画監督・山田洋次−日本映画の頂点にいる二人の対談が実現!第2回

<マスターズ・オブ・シネマ2008>  4月19日 早稲田大学8号館

松本清張初の新聞小説「砂の器」を大胆にシナリオ化

 「『七人の侍』から『砂の器』まで20年ですね」と水を向けたのは共に脚本家として名を連ねた山田監督。警視庁の聞き込み捜査に同行したり、橋本さんとロケハンに山陰まで飛んだことをうれしそうに語る。
 「砂の器」は作家・松本清張氏の初めての新聞小説。最初からシナリオは橋本忍と決まっていた。「松竹から新聞の切り抜きをドサッと持ってくるんだけど、これが長くてしんどい。全然おもしろくないんだよ。だから半分やめるつもりだったんだけど、山陰まで来たんですからって、洋ちゃん(山田洋次監督のこと)に諭されてね」「それじゃ、ほかのことを全部捨てて親子の旅だけで1本作ろう、って割り切ってから割とトントンと進んだんだよ」
 橋本さんに言わせるとそれは競馬の「まくり」と同じ。1コーナー、2コーナーで一番高い位置まで上がって、3コーナーから一気にホームを駆け抜ける。「砂の器」で逮捕状を請求するまでが第1コーナー、フィアンセ一家を音楽会に招待するまでが第2コーナー、捜査会議が始まるのがホームストレッチだ。音楽会と捜査会議と親子の旅がシンクロして同じテンポで進んでいく。これはまた人形浄瑠璃と同じ形式で、中央の人形の動きが「親子の旅」、上手が浄瑠璃語りで「警視庁の捜査会議」、下手が三味線で「オーケストラ」。この3つが同時進行する。これは行ける!と思ったという。

1コマずつ編集して「親子の旅」からセリフを抜いた

 「砂の器」では「親子の旅」が一番印象に残るシーンなのだが、それにはもともとセリフがついていたそうだ。しかし一コマずつ自ら編集してこれ以上切れないというところまで圧縮された「親子の旅」にセリフの入る余地はなかった。実際には関係者が橋本さんに内緒でセリフ入りのラッシュを見たそうだが、結論は同じだった。
 「映画というのは、見る者に極端な緊張感を強いる特殊な見せ物だ。そこにセリフが入ると意味を解釈する必要が出てくる。そうすると目の緊張がゆるんでそのたびに面白くなくなるんだよ」「『砂の器』にセリフを入れていたら、風変りなスリラー映画で1年か2年で終わったでしょうね。それが40年たった今でも公開され、生命力を持ち続けているのは「親子の旅」が無声映画に回帰しているからです」

自分の中にある一番大切なものを無くさないために

 最後に、脚本家橋本忍さんが語った学生に贈る言葉を紹介しよう。
 「昨日満90歳の誕生日を迎えたんです。人生を振り返ってみて付け加えることは何もなかったような気がします。皆さんが学校へ来るのも、何かを得るためではなく、自分にはない何かを付け加えるためでもなく、自分の中にある一番大切なもの、大事なものを失わないため、無くさないために学校に来ている。いや、そんな風にありたいと思います」