早稲田大学
映画「イキガミ」をめぐって
メインキャスト・スタッフによるティーチイン
文部科学省 現代GP企画 テーマスタディ「映画・映像」特別講座
9月16日 早稲田大学 小野記念講堂
映画「イキガミ」の公開(9月27日)に先立ち、16日早稲田大学小野記念講堂にて、特別上映会とメインキャスト・スタッフによるトーク&ティーチインが行われた。これは国際情報通信研究科、安藤教授が主宰する「映画・映像」特別講座のテーマスタディ。『イキガミ〜生きるとはなんだろうか」がテーマである。
大反響を呼んだコミック「イキガミ」の映画化
「イキガミ」は「週刊ヤングサンデー」に2005年より連載され、大反響を呼んだコミック。累計180万部を超えるロングセラーで、映画化にあたっては50社を超える企業からオファーがあったという超話題作だ。
設定がショッキングだ。「生命の価値」を高めるために、「国家繁栄維持法」によって、1000人に一人の割合で若者の命が奪われる。政府より発行される死亡予告証、通称「逝紙(イキガミ)」を受け取ったものは、24時間後に必ず死亡する。
その「イキガミ」の配達人役が今注目の若手俳優松田翔太。かつての相棒にイキガミが届くストリートミュージシャン役に塚本高史。イキガミが届いたのを機に、自分の角膜を盲目の妹に移植しようとするチンピラ役に山田孝之。交通事故で盲目になった妹役に成海璃子。
さらに風吹ジュン、柄本明、笹野高史などベテラン陣がそろい、映画を重厚なものにしている。監督は「樹の海」「犯人に告ぐ」などでリアルな人間ドラマを描いてきた瀧本智行。物語の設定の特異さが逆に、生きるとは何か、本当の命の輝きとは何かを鮮烈に訴える衝撃的なヒューマン・ドラマとなっている。
希薄な生命感覚のなかで、「生きる」ことを問う
トーク&ティーチインには、原作者である漫画家の間瀬元朗さん、瀧本智行監督、主演の松田翔太さん、主題歌「みちしるべ」の作詞・作曲を手がけた、フィルハーモユニークのボーカル・五郎川陸快さん、そして、原作の出版元・小学館の田中淳一郎さんの5人が出席した。
「ありえない設定。しかし同時に“リアル”だな、と感じた」と語るのは瀧本監督。「イキガミをもらってから24時間どう生きようか、と突きつけられる登場人物たちと自分自身がダブって見えた。これを何とか映画にしたくてメガホンを取った。」
間瀬元朗さんが作品を書いたきっかけは、9.11テロのテレビ生中継を眼にした時。「人が死んでいくさま、ビルが倒壊していく場面。現実でありながらも、どこか現実感がない。希薄な“生命感覚”の中で、いざ自分が死を宣告された時に何をするだろうか、と考えたと語る。「理想的な生き方とは何でしょうか」という学生の質問には、「多分その答えはないと思う。ただ、理想的な生き方を考えることが<生きる>ことだ」と付け加えた。
もっと発信できる自分に−主演の松田翔太
「揺れる心をどう表現したらいいのか悩んだ。実際の自分の生活の中にストレスをためて役作りをした」のが松田翔太さん。学生からこの特別講座に出席した感想を求められると「皆さんが羨ましい。もっと勉強してボクも早稲田に行きたかった」と笑顔で答える。松田さんは今、勉強モード。本を読んだり、英語を勉強したり、と頑張っているそうだが、イギリスにいた経験も踏まえて、「日本の文化はすばらしい。カッコいいと思う。しかしそのことを主張し、発信しないと人には伝わらない。だから日本人はもっともっと発信すべきだ。」と語る。それは主人公の生きざまに対する異論でもあるようだ。
この特別講座には入場券を求めて早朝から並ぶ熱心な学生たちが出るほどの大盛況。映画鑑賞後もその感動さめやらぬ中で学生達の質問が矢継ぎ早に続く。安藤教授の司会で進められた出演者・スタッフ・学生たちのティーチインは、生きること、死ぬこと、国家と人間など重いテーマに正面から向き合う真摯で熱のこもった意見交換となった。
締めくくりに、「必死に曲を作っていることがボクにとっては<生きる>こと」、とヴォーカルの五郎川さんがアコースティックギターを手にステージ中央に。主題歌「みちしるべ」を熱唱した。
「イキガミ」をめぐるテーマスタディは、学生たちに生きることの意味を問い、生きることの素晴らしさを確認する感動的な特別講座となった。